本レポートは、クロールが、世界の幅広い業種における企業幹部588名を対象に、経営リスクに関する実態調査を行い、様々な角度から分析を行なっています。昨今のビジネス環境を考慮したうえで、リスク情勢、リスク管理、コンプライアンス、テクノロジー、グローバル環境下のリスク、主要国別リスクで構成されています。
昨今のグローバルビジネス環境は、パンデミック、貿易摩擦、国際テロ、サイバーテロなど不確実性に満ちています。このような先行きが見通せない状況では、全体を俯瞰して、客観的な視点でビジネスリスクの大きな流れをつかむマクロ的な視点と、より詳細な情報に近づいて、様々な角度からビジネスリスクを読み取るミクロ的な視点の両方が、より求められると報告しています。
地政学リスクは看過できないものとなっています。今回の実態調査の結果からも58%の企業が「新しい関税または貿易戦争」に影響を受けたと回答しており、危機意識を持っています。この貿易政策に影響を与えた組織として、例えば、対米外国投資委員会(CFIUS)が挙げられ、このような委員会の動向や規制のトレンドが、自社のビジネスに対してどのような影響を与えるのか、マクロ的視点から理解することが重要です。
2020年代のテクノロジーの台頭により、提携関係や取引関係が益々重要性を増しているなか、これらの関係に付随するリスクを評価し、未然にリスクの顕在化を防ぐため、新しい視点のデューデリジェンスが必要となってきています。今回の実態調査の結果、79%の企業が、関係する個人や企業の信用調査を目的としたデューデリジェンスを実施していましたが、今後はさらに一歩踏み込んで、レピュテーションに影響するリスクを網羅した、ミクロ的かつ複眼的なデューデリジェンスが求められます。
主要国別リスクのなかでも、特に日本に顕著なリスクとして、検査データの改ざんを含む品質不正リスクが挙げられます。このような不正が内部監査によって発見された割合は、世界平均の28%に対して、日本は20%と低い結果となりました。内部監査の実効化に関わるヒントは、コンプライアンスのなかで触れていますが、自社における被害を食い止めるためには、既存のコンプライアンス対策に依存することなく、新たなリスクの動向や地域特有のリスクを敏感に察知し、先手を打った対策を早期に打っていくことが重要です。